江戸の味は「旬」と「かえし(醤油×みりん×砂糖)」と「火加減」。本稿では、今日から作れる再現レシピ8品を、現代の台所で失敗しにくい配合で示しすでござる。当時の料理書や伝承に見られる甘辛・出汁の効かせ方をベースに、家庭で作りやすい食材と分量に調整(所説あり)。
本稿は“雰囲気と味”の再現を目的とした現代アレンジです。歴史的厳密性より作りやすさを優先しているでござる。
目次
深川めし(ぶっかけ式)
豆腐の田楽(赤味噌だれ)
けんちん汁(ごま油香る)
江戸前そば:基本の「かえし」と「もりつゆ」
まぐろのヅケ丼(煮切りだれ)
佃煮(昆布&しらすの簡易)
茶飯(ほうじ茶で炊く)
わけぎのぬた(酢みそ)
きょうは江戸の台所を拙者と一緒に旅するでござる。むずかしい道具は使わず、味の決め手は「かえし」と「出汁」。手早く、粋に仕上げるのが流儀でござるよ。
1|深川めし(ぶっかけ式・10分)
材料(2人分)
あさり(むき身)150g※冷凍可/長ねぎ 1/2本(小口)/しょうが(千切り)少々/だし 180ml/酒 大さじ2/みりん 小さじ2/醤油 小さじ2/ごはん 茶碗2杯
つくり方
小鍋にだし・酒・しょうがを入れ中火。
沸いたらあさりを入れ1分。
みりん・醤油で調え、ねぎを加えて火を止める。
熱いごはんに具と汁をたっぷりかける。
さむらいTips:煮すぎると身が固くなるゆえ、短時間で退くのが肝でござる。
2|豆腐の田楽(赤味噌だれ・15分)
材料(2人分)
木綿豆腐 1丁(300g)/赤味噌 大さじ2※合わせ味噌でも可/砂糖 大さじ1と1/2/みりん 大さじ1/酒 大さじ1/白ごま 少々
つくり方
豆腐はキッチンペーパーで10分水切り。
味噌・砂糖・みりん・酒を小鍋で弱火2〜3分、照りが出たら止める。
豆腐を食べやすく切り、フライパンで乾焼きして水分を飛ばす。
たれを塗り、表面をさっと焼き締め、白ごま。
さむらいTips:豆腐は焼いて水分を抜くと、たれがのって粋でござる。
3|けんちん汁(ごま油香る・20分)
材料(2〜3人分)
大根 5cm/にんじん 1/3本/ごぼう 1/3本/木綿豆腐 1/2丁/長ねぎ 1/2本/ごま油 小さじ2/だし 600ml/醤油 小さじ2〜3/塩 ひとつまみ
つくり方
鍋にごま油、ささがきごぼう・短冊大根・にんじんを炒め、香りを出す。
だしを注ぎ、アクを引きながら10分。
ちぎった豆腐・斜めねぎを加え、醤油と塩で調える。
さむらいTips:醤油は控えめ、出汁を立てるのが江戸流でござる。
4|江戸前そば:基本の「かえし」と「もりつゆ」
かえし(約300ml・作りおき)
濃口醤油 180ml/みりん 90ml/砂糖 大さじ1〜2
小鍋で合わせ一度だけ沸かす→粗熱→密閉→一晩おければ尚よし(30分で即使用も可)。
もりつゆ(1人分)
かえし 40ml:温または冷の出汁 120〜160ml(1:3〜4)
かつお・昆布の一番だし推奨。甘めが好みならかえしを気持ち多めに。
そばのゆで方
大鍋のたっぷりの沸騰湯で袋表示どおり。差し水は不要。流水でぬめりを落とし、氷水でキュッと締めて盛る。
さむらいTips:薬味はねぎ7わさび3の気持ちでござる。つゆはちょい浸しが粋。
5|まぐろのヅケ丼(煮切りだれ・10分+漬け10分)
材料(2人分)
まぐろ刺身 200g/ごはん 2杯/刻み海苔・白ごま 適量/わさび 少々
漬けだれ:醤油 大さじ3/みりん 大さじ2/酒 大さじ1(煮切る)
つくり方
たれを小鍋で1分ほど沸かしアルコールを飛ばし、粗熱をとる。
まぐろを10〜20分漬ける。
温かいごはんにのせ、海苔・ごま・わさび。
さむらいTips:炙りにすれば生が苦手な御仁にも優しいでござる。
6|佃煮(昆布&しらすの簡易・15分)
材料(作りやすい量)
刻み昆布 20g※または塩昆布/しらす 50g/醤油 大さじ2/みりん 大さじ2/酒 大さじ1/砂糖 小さじ1
つくり方
小鍋に調味を合わせて軽く煮立てる。
昆布・しらすを入れ、弱火で水気がほぼ飛ぶまで。
冷めると味が締まるので、気持ち早めに火を止める。
さむらいTips:仕上げに酢を数滴で後口すっきりでござる。
7|茶飯(ほうじ茶で炊く・炊飯器)
材料(2合)
米 2合/濃いめのほうじ茶 420ml(目安)/薄口醤油 小さじ2/塩 ひとつまみ
つくり方
洗米し30分浸水。
ほうじ茶+調味で2合の線まで。
通常炊飯。蒸らし10分、天地返し。
さむらいTips:油揚げを細く入れても旨みが増して粋でござる。
8|わけぎのぬた(酢みそ・10分)
材料(2人分)
わけぎ 1束/白味噌 大さじ2/酢 大さじ1と1/2/砂糖 小さじ2/からし 少々
つくり方
わけぎは塩少々を入れた湯でさっと茹で、冷水に取り水気を絞る。
白味噌・酢・砂糖・からしを混ぜ、和える。
さむらいTips:ぬめりは旨み。絞りすぎ注意でござる。
コラム|江戸の味付け「早見表」
煮物(甘辛):醤油:みりん:酒=1:1:1+砂糖 少々
照り焼きだれ:1:1:1+砂糖 小さじ1(/100ml)
ヅケ地:醤油:みりん:酒=2:1:1(煮切り)
そばつゆ:かえし1:出汁3〜4
調味は入れすぎず、火は入れすぎず。退き際がうまさの秘訣でござる。
季節の小鉢セット例(献立組み)
春:わけぎのぬた+けんちん汁+もり蕎麦
夏:茶飯+豆腐田楽+きゅうり浅漬け
秋:深川めし+しめじの照り煮+お椀
冬:ヅケ丼+けんちん汁+佃煮











