あの歌を大和言葉で書いたらこうなったのです。

昔から歌い継がれてきた歌を選び
原文のあとに、なぜか大和言葉ふうの言いかえを並べたものです。
言いかえは大和言葉に、適当、ざっくりとなおしてみた歌詞です。特に深い意味はありません。
一 故郷
原文
兎追ひしかの山、
小鮒釣りしかの川、
夢は今もめぐりて、
忘れがたき故郷。
如何にいます、父母、
恙(つつが)なしや、友がき、
雨に風につけても、
思ひいづる故郷。
こころざしをはたして、
いつの日にか 歸(かへ)らん、
山はあをき故郷、
水は清き故郷。
大和言葉の文
うさぎを追った山の道
こぶなを釣った川のへり
足のうらの土の冷たさまで
ふいに胸へ戻ってくる
遠くにいるほど
思い出は近くなる
雨が降れば 雨の匂いで
風が吹けば 風の音で
あの里の気配が そっと立つ
今は帰れぬ日もあろう
けれど心は 置き去りにならない
青い山は いまも山のまま
澄んだ水は いまも水のまま
帰るというより
迎えに来るように
ふるさとは胸の中で待っている
二 蛍の光
原文
ほたるのひかり。まどのゆき。
書(ふみ)よむつき日。かさねつゝ。
いつしか年も。すぎのとを。
あけてぞけさは。わかれゆく。
とまるもゆくも。かぎりとて。
かたみにおもふちよろづの。
こゝろのはしを。ひとことに。
さきくとばかり。うたふなり。
つくしのきはみ。みちのおく。
うみやまとほく。へだつとも。
そのまごころは。へだてなく。
ひとつにつくせ。くにのため。
千島(ちしま)のおくも。おきなはも。
やしまのうちの。まもりなり。
いたらんくにに。いさをしく。
つとめよわがせ。つつがなく。
大和言葉の文
小さな灯と 窓の白さ
それだけを頼りに
文字を追う夜を重ねた
気づけば季節は いくつも過ぎ
扉の向こうに 朝が立つ
立つ者も 残る者も
胸にあるのは同じもの
言い残しは多いけれど
ことばひとつに丸めるなら
つつがなくあれ
それだけで足りる
道は遠くへ伸びる
海や山が間に入る
それでも心は切れない
隔てるものが多いほど
つなぐ手は かえって強くなる
端の島でも 南の浜でも
同じ空がかかる
行く先がどこであれ
務めを果たし
息を整え
無事であれと そっと祈る
三 さくらさくら
原文
さくら さくら、
野山も、里も、
見わたす かぎり、
かすみか、雲か、
朝日に にほふ。
さくら さくら、
花ざかり。
大和言葉の文
さくら さくら
野も里も うす紅にほどけ
霞か雲か 見分けがつかぬほど
朝のひかりに 匂いが立つ
近づけば ひらり
離れれば ふわり
手のひらに乗せても すぐ消えて
それでも 目の奥に残る
春は急ぎ足
だから今だけは
見上げる時間を けちらない
四 シャボン玉
原文
シャボン玉 飛んだ
屋根まで 飛んだ
屋根まで 飛んで
こわれて 消えた
シャボン玉 消えた
飛ばずに 消えた
生れて すぐに
こわれて 消えた
風 風 吹くな
シャボン玉 飛ばそ
大和言葉の文
しゃぼんだまふわりと浮いて きらりと笑い
あっという間に ほどけて消える
触れたいと思うほど
手が届かなくなる
飛んで消えるもの
飛べずに消えるもの
どちらも同じに
生まれて 光って 消えていく
短いからこそ
見送る目がやさしくなる
風よ 今日は荒れるな
この小さな空を
もう少しだけ 運んでおくれ
こわれる前の一息を
胸の中へ しまわせてくれ
五 ちょうちょう
原文
ちょうちょう ちょうちょう
菜の葉にとまれ
菜の葉にあいたら 桜にとまれ
桜の花の 花から花へ
とまれよ あそべ あそべよ とまれ
大和言葉の文
ちょうちょう ちょうちょう
菜の葉で ひと休み
飽いたら さくらへ
花から花へ ふわり ひらり
まっすぐ行かずともよい
風の道にまかせてよい
好きな匂いの方へ
好きな明るさの方へ
とまっては遊び
遊んでは飛ぶ
春の真ん中を ひとりで満たす
六 どんぐりころころ
原文
どんぐり コロコロ ドンブリコ、
おいけに はまって さあ たいへん。
どじょうが でてきて こんにちは、
ぼっちゃん いっしょに あそびましょう。
どんぐり コロコロ よろこんで、
しばらく いっしょに あそんだが、
やっぱり お山が こいしいと、
ないては どじょうを こまらせた。
大和言葉の文
どんぐり ころり
ころころ どんぶりこ
池へ ぽちゃんと落っこちて
水の冷たさに 目を丸くする
そこへ ぬるりと顔が出て
どじょうが こんにちは
怖がらなくていいよと
水の中の道を見せる
しばらく いっしょに遊ぶうち
心も ころころほどけていく
けれど ふいに思い出す
山の匂い
土のやわらかさ
葉っぱの上の乾いた音
帰りたいと ぽろり
涙が落ちる
どじょうは困って
それでも見捨てずに
静かにそばにいる
小さなわがままも
帰りたい気持ちも
どちらも抱えて
今日の話は終わる
七 かごめかごめ
原文
かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ?
大和言葉の文
輪の中で 目をとじる
まわりの足音が 近づいたり遠ざかったりする
うた声が 回りながら
胸の鼓動も つられて回る
籠の中の鳥は いつ出るのか
夜と朝の さかい目に
鶴と亀が つるりと滑る
意味は分からぬのに
なぜか ぞくりとする
うしろの正面
そこにいるのは だれ
当たった瞬間
息がほどけ
笑いが ぱっと広がる
八 仰げば尊し
原文
あふげばたふとし。わが 師(し)の 恩(おん)。
教(をしへ)の 庭(には)にも。はやいくとせ。
おもへばいと 疾(と)し。このとし月。
今こそわかれめ。いざゝらば。
互(たがひ)にむつみし。日ごろの恩。
わかるゝ後にも。やよわするな。
身をたて名をあげ。やよはげめよ。
いまこそわかれめ。いざゝらば。
朝ゆふなれにし。まなびの 窓(まど)。
ほたるのともし火。つむ 白雪(しらゆき)。
わするゝまぞなき。ゆくとし月。
今こそわかれめ。いざゝらば。
大和言葉の文
顔を上げれば
教えてくれた背がある
口うるさい日もあったろう
けれど その一言が
のちの道で 何度も支えになる
ともに過ごした日々は
言い合いも笑いも ひとまとめ
別れたあとも
縁は ほどけない
思い出すたび
胸の中の灯が つく
窓ぎわの夜
小さな灯で 文字を追った
寒さに耐え 眠さに耐え
積み上げた日々が
いま からだの中に残っている
だから歩ける
ひとりになっても 歩ける
九 一月一日
原文
年のはじめの ためしとて、
終なき世の めでたさを、
松竹たてて、 かどごとに
いはふ今日こそ たのしけれ。
初日のひかり さしいでて、
よもに輝く 今朝のそら、
君がみかげに たぐへつつ
仰ぎ見るこそ たふとけれ。
大和言葉の文
年のはじめ
息を吸うだけで 空気がちがう
門の前には まつとたけ
家ごとに 小さな支度が整う
初日のひかりが
すっと差して
影がのびる
それだけで
胸の中の埃が落ちる
大きな願いでなくてよい
今日をていねいに始めること
昨日のつまずきを ほどいて
歩き直すこと
見上げる空が明るいなら
足もとも きっと明るくなる
おわりに
大和言葉…
同じ景色でも息づかいが変わりますね。読んでいただきありがとうございました。








